つむぎめむすび

つれづれなるままに、何気ない今日を。

【十二国記・図南の翼】そんなこと、あたしにできるはず、ないじゃない!

 

そんなこと、あたしにできるはず、ないじゃない!

———『図南の翼』370頁

 

もうここの場面が好きすぎて、こうやって書いてる間にも笑みがこぼれる(いい感じの言い方したけど、要はにやけてる)
ここからの殊晶ちゃんの本音が本当に好きで。

「義務だと思ったからよ!」370頁

「あたしばっかり大丈夫なんじゃ、寝覚めが悪いからに決まってるじゃない」373頁

「愚痴を言って人を妬む暇があれば、自分が周囲の人を引き連れて昇山すればいいじゃない。昇山して初めて、愚痴を言っても許されるんだと思うのよ」378頁

うんうん、そうだよね、そりゃそうよね。

って頭なでなでしながら聞いてあげたくなっちゃう。
この時ばかりは殊晶ちゃんに強い態度に出られない頑丘と同じ気分。

12歳で昇山を国民の義務だと思ったところがまずすごいよ…。やってから文句言えスタイルも好き。私も結構こんなタイプ。ここまで信念強くできはしないけど。まさに「責難は成事にあらず」。

王なんてできるはずないって言いながら、やっちゃう殊晶ちゃんなんだけどね。

お金持ちのお嬢様で気ままに暮らせばいいのに、そんな自分が許せなくて。

「大人が行かないのなら、あたしが行くわ」50頁

ここから始まったおてんば娘の冒険劇。

「できる人間がただ助ける一方なのは、助け合うとは言わねえ。荷物を抱えるってんだ」184頁 

だが、それ以上は分を超える。だから主人以外の者が襲われても、助けに行くことなどないし、したくともできない。252頁

曲がってる!って思ってることにはすぐに口出して(笑)その様子が確かに子供っぽいんだけど、大人が忘れたもの、諦めてきたものを持っている気がして、色んな場面でどきっとさせられる。

黄海を旅する間に自分以外の人の考えや立場を知って、どんどん成長していく殊晶ちゃん。ああ、何でもありのまま素直に受け止めていたら、人ってこんなに変わっていくんだなあ…としみじみ。

「あなた、眼があるんでしょう?耳があるでしょう?そこにあるものを眼を開いて耳をそばだててちゃんと受け止めていれば、分かることだってたくさんあると思わない?」340頁

はい、その通りです、殊晶先生。すみませんでした(平伏)
できるはずないことないよ。もう本当、はたから見てたらあなた十分王の器よ…。

まっすぐで、まっすぐで、まっすぐで。

その瞳に、大人はたじたじだろうなあ。

「——だったら、あたしが生まれたときに、どうして来ないの、大莫迦者っ!」397頁

そして、この衝撃のラスト。「あー良かったね、殊晶ちゃん」ってのんびり誓約シーンに入るんかと思ったら、まさかの平手打ち。思わず前かがみになって読んじゃうくらいの驚き。

まあ、確かに供麒のんびりしすぎよ…。でもやっと王に会えてウキウキルンルンなの可愛すぎる。タイプの違う純粋のぶつかり合い。

とにかく図南は名言が多くて、それゆえに印象的なページに挟んでる付箋の数も多い。番外編的立場かと思いきや、更夜まで出てきちゃうし。黄朱の存在は白銀でも重要になってくるし。短編集にも重要な設定がさらっと書かれてたりする。だから油断ならない十二国記

 

泰麒ド沼だけど、十二国記で一冊だけ選べって言われたら図南を選ぶなあ。この一冊のスピード感、目を開かされる感じ、殊晶ちゃんの人柄、全てが爽快で大好き。

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