つむぎめむすび

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【読了・白銀の墟 玄の月】「天の理を覆す意志の力」十二国記完走!

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ついに、ついに、ついに…

読み切ってしまった。

 

泰麒。

蓬莱生まれの麒麟。胎果の麒麟

 

読めば読むほど(特に最終巻)阿選が憎くてたまらなくなって、「ちょっと代わって!私が代わりに阿選を屠るから!」って気持ちになったくらい。

「…救う方法はあると思いますか」って聞いて、「雪のような静かな声で」、驍宗様に最後のお返しをって言ってたところなんか、本当に2人揃って死んじゃうんじゃないかって信じちゃったよ…もはやそれでもいいかなって気もしちゃったよ…描き方凄すぎる、小野先生。

 

泰麒、無双使令持ってるんだから、さっさと使令帰ってきてあげてよ〜と何度も願い、最後に起こる「奇蹟」も、指令が戻って阿選を追っ払ってくれるのかしらってちょっとだけ期待してたら…

 

そんなことじゃなかった。

そういうことじゃなかった。

そんなに優しくなかった。

 

もっともっと残酷で、美しかった。

 

散々言われていた麒麟の血の汚れ。穢瘁。

麒麟に剣は使えないのだと、麒麟は汚れなきものだと、これまでの全ての巻をかけて納得させられていたはずだった。

 

なのに、

なのに、、、

 

「左手で兵卒を引き寄せ、同時に右手で兵卒の剣を抜く」…それからの場面とかもう、本当、鳥肌涙もの。

 

使令も奇蹟も使わず、自らの意志で成し遂げた。

正頼に会いに行った時だって。阿選への平伏だって。「かつては不可能に思われた。手を突いた、ただこれだけの距離」その「かつて」からまた蓬莱に流され、そこで目にした殺戮。

「これだけの距離を超えられないーーなどと言うことが許されるだろうか?」「意志の力で殺傷できるなら、この距離だって越えられる」

たとえ、「厄介者」だったのだとしても、高里要として生きてきた責任を自覚している泰麒は、やっぱり並みの麒麟じゃない。

雛泰麒の頃は天に逆らったことを(本当は逆らってなかったけど)あんなに恐れ、嘆いていたのに、今の泰麒は天に逆らうことだと分かった上で、意志の力で越えようとしている、そして越えた。

 

間諜の浹和と仲良さそうに再会している時だって、「駄目だよ!泰麒!油断しちゃ!」ってつい雛泰麒を見守るお姉ちゃん気分で読んでいたけど、泰麒はそんなに「おめでたく」なくて。基本的に誰も信用しないようにしてるなんて言っちゃって、なんなら李斎さえ疑ってて。あぁこんなに成長してたのね…と思う反面、やっぱり「麒麟」としては異質だなと。まさに「最大の曲者」。耶利ちゃんと同じ気持ち。(耶利ちゃんは読者筆頭だと思ってる)

 

冷静で、冷徹で、冷酷で。

麒麟を表すのにこんな言葉が並ぶ?!って感じだけど、やっぱり間違いなく泰麒は麒麟で。

不可能を可能にしていく意志の力に、感動しつつハラハラしつつ、最後はもう読むのに力入りすぎて、かなり疲れて読み切った。駆け抜けた。

将来に亘って不調は残るようだけど、戴という国にとっては正常な状態に戻ったし、泰麒の行動がなければ確実に阿選の支配下だったわけだし、天に泰麒の無茶は認められたってことなのかな。

 

慈悲深い綺麗な面も、汚く残酷な影の面も知り尽くし、己の責任としてその重みを自覚してる泰麒は強い。あわよくば、よく頑張ったねって抱きしめてあげたい←

「あのね、正頼」って可愛く、あざとくおねだりしてた雛泰麒にはもう会えないけど、汚れを知った泰麒は、「血の気が多い」戴に必要な麒麟だと思う。

 

個人的に、恵棟が病み、朽桟、酆都が亡くなったのは悲しすぎた…。返して!まじ阿選許せん。「生き残ったものの数を数えるんだ」と言われても、そんなに強い人間じゃないからどうにもならない喪失感。

でも無性に

ーー城の南で戦って 郭の北で死んだのさ

  野垂れ死にしてそのまんま 

       あとは烏が喰らうだけ

悲しく残酷なこの歌に心ほぐされる。

 

生き残った方々にはどうか新たな元号「明幟」のもと(この元号も素敵すぎないか泣)恙ない日々を送って欲しい。泰麒には「蒿里」として驍宗様を見守りながら、正頼や李斎に囲まれて、自分がいるべき居場所で幸せに生きて欲しい。

青年泰麒は基本的に憂いている姿しか見てないから、穏やかな日常も見たいな。正頼との絡みとか…2人で飽きずにのんびり王宮探検しながら花摘んで、それを李斎にプレゼントして、その様子を驍宗様が羨ましそうに見守ってる日常が見たい…。「台輔ってこんなに丸い人だったんだ…」って耶利ちゃんにびっくりして欲しい…!

 

#十二国記 #小野不由美