つむぎめむすび

つれづれなるままに、何気ない今日を。

不器用だけど大きな愛で通した一本道。重松清『とんび』

本を読みながら涙を流したのはいつぶりだろう。目が潤むことはあるけど、次から次に涙がこぼれてきたのは、すごく久しぶりだった気がする。

f:id:tsumugi321:20200929135457j:image

前に国語の問題として解いた『とんび』。その時に油断してたら解きながら泣きそうになって、自分で自分にびっくりした。
それからずっと読みたいなあと思っていてようやく。国語の問題で解いたのは、作品では後半の方だったけど、もう前半から泣ける。

なんなん、ヤスさん。めっちゃ好きなんだけど。めっちゃ響くんだけど。

備後地域が舞台で、登場人物は大体みんな方言を喋ってるのもいい。まして自分が広島に住んでたことがあるから、文章がそのままあっちのイントネーションで流れてきて、また泣ける。言葉って大事よね。言葉が文字だけではなく、その雰囲気までストレートに伝えてくると、もうそれは「言葉」を超える。情感がすごい。

ヤスさんたちの「言葉」を理解するために、この作品を最大限味わうために、私は広島に住んでたのでは…って思ったくらいだった。

 

作品に一貫して現れてるのは「愛」。色んな形の愛があって、色んな形の家族がある。不器用で照れ屋が過ぎるヤスさんの、大きな大きな愛がたまらない。

結婚もしてないくせに、ヤスさんと一緒に子育て終えた気分だったもん(笑)それくらい、思いが豊かに伝わってくる。

小説界で1番好きな男はヤスさんかもなあ。私の性格はヤスさんと結婚できないけど(笑)こうやって客観的に見とく分にはすごくいい。素敵。

 

 

 

重松清にやられた感はあるけど、とにかく『とんび』めちゃっくちゃ好きだった。図書館で借りたのに、好きすぎて買っちゃったよ。