つむぎめむすび

つれづれなるままに、何気ない今日を。

【十二国記・風の万里 黎明の空】「世界中の誰もが私を疑っても、お前だけは私を信じていなければならない」

万里もさ、名言名シーン多いけど、これも初読で1番ぐっときた(にやけた)シーンを。

「私を信じない第一の者は、私なんだから。誰が疑わなくても私だけは、私の王たるべき資質を疑っている。ーーだから、たとえ世界中の誰もが私を疑っても、お前だけは私を信じていなければならない」
ーー『風の万里 黎明の空』65頁

 陽子ちゃんかっこいいよおおおおお。いけめんん!!数か月前に王になったのに、こんなこと言える子がいるんだろうか…。
そりゃ常世の常識は分からないから仕方ないけどさ、もうそれ以外の面では本当にしっかりしてるじゃん。みんな汚い権力争いなんかしないで、陽子に色々教えてあげてよ…大人ひでえって思ってた。

どんだけため息つかれても、常世に知り合いが少ない陽子にとって景麒の存在だけが、自分が王として立ってていい証なんだろうなあ。

万里はそんな景麒との場面が特に好き。

「…それほど私にお怒りか」  172頁

この聞き方もまじ景麒。言い方よなあ(笑)

いや、と陽子は背中を向けたまま首を振る。
「自分に腹が立っているだけだ…」
景麒は軽く息を吐く。自分は言葉が足りないのだ。とくに言葉を惜しむわけではないのだが、常に気が廻らない。足りなかったことにあとから気づく。

最初はため息ばっかついてないで、陽子を助けてやれやって思ってたけど、だんだんそんな不器用景麒が愛おしくなってくる。

「私の言葉が足りませんでした」
「いや、私がちゃんと訊けばよかった。…済まない」
行こう、と促す主の顔を見やって、景麒はわずかに眼を細めた。責めない主の強い心根が嬉しく、同時に懐かしい気がする。

ひそかに喜ぶ景麒が、本当は飼い主に甘えたい獣っぽくて可愛いよううう。

ーいいえ。
懐かしい幼い声がする。
ーぼくが早とちりしないで、ちゃんとお訊きしてれば良かったんです。
景麒は藍の漂い始めた空を見やる。
かの国はーあちらだろうか。  173頁

 そして突然の泰麒な。

ん“ん“ん“ん“ん“ん“んんんんんn

(恒例の泰麒への愛によるバグ)


泰麒のこと思い出しちゃって、戴の方角に目を向けちゃう景麒のお兄ちゃんっぷりがあああ。なんで!陽子には素直じゃないくせに!!(笑)永遠に泰麒きゅんには甘いんだから!もう!!気持ちは分かるけど!!

きっと戴で謀反があったって連絡が来た時からずっと、景麒は泰麒のことを心配してたんだろうね。ふと思い出しちゃうほどだもんね。嗚呼美しき同族愛…。黄昏で陽子が泰麒を探すって言った時嬉しかっただろうねぇ。

f:id:tsumugi321:20200701144332j:image

 

あとは、あの、禁軍を前にして景麒に乗った陽子が勅命をくだす、スカッとジャパン出れそうな場面な。

「私に騎獣の真似事をせよと?」 358

 いやいや、まじ言い方ww泰麒のことは自分から乗せたやん。陽子もめそめそ泣いてたらちょっとは優しくしてくれるのかなあ。涙には弱そうだもんね、景麒。予王には強く言えてなさそうだし。でも、陽子と言い合いしながら進んでいくのも、本当は嬉しいんだろうなあ。

そして初勅。「人はね、景麒」からの場面。

「礼とは心の中にあるものを表すためで、形によって心を量るためのものではないだろう」  389頁

 

「人は誰の奴隷でもない。そんなことのために生まれるのじゃない。他者に虐げられても屈することない心、災厄に襲われても挫けることのない心、不正があれば糺すことを恐れず、豹虎に媚びず、ー私は慶のためにそんな不羈の民になってほしい。己という領土を収める唯一無二の君主に」

はああああああ。かっこいい。自分は愚かだって悩んでた女子高生どこ行った。自分の力で立とうとしないと何も得られないし、他人に頼るしかなくなっていつしかその他人の思うままに動いてしまうんだよね。


白銀で、王や麒麟の前で伏礼してたから、彼らの顔より床の色を見分けるほうが容易い(うろ覚え)っていう描写あったけど、本当この世界では有無を言わさず伏礼なんだろうなあ。確かに現代日本から来たら違和感ありすぎだわ…。

「その証として、伏礼を廃す。ーこれをもって初勅とする」  390頁

初勅なんなんだろう…って思い続けながら読んできた読者の期待を裏切らないラスト。さすがの展開。

あと、景麒っていつも陽子が侮られないか心配してくれるよね。すんごく分かりづらいけど景麒なりに守ってるんだよね。愛だね、分かりづらいけど。

 

やばい、もう2000字超えてしまったけど、最後にひとつだけ。鈴と祥瓊の会話をば。

「人間って不幸の競争をしてしまうわね。ーー自分が一番可哀想だって思うのは、自分が一番幸せだって思うことと同じくらい気持ちいいことなのかもしれない。自分を哀れんで。他人を怨んで、本当に一番やらなきゃいけないことから逃げてしまう…」  302頁

この2人も本当成長したよね。祥瓊のことを知った月渓が『華胥の幽夢  乗月』で人は変わることもあるんだって感じてたのが良かったなあ。

ああ、あと2人に、私が景王だって暴露する陽子の場面も好き。お笑いっぽいけど…とか気まずそうな陽子が可愛い。もう、ぶっきらぼうだなあ。(楽俊ボイス)

 

月影から一緒に旅している気分だった陽子がどんどん成長して王になっていく。その変化が活字だけで生き生きと伝わってくるから小説はすごい。

私も不幸の競争しないように気を付けよう。不羈の民でいよう。自分の足で立っていよう。

 

 

 関連↓

tsumugime.hatenablog.com

tsumugime.hatenablog.com

tsumugime.hatenablog.com

 

 

#毎日更新60日目